プレビューまとめ

1.神話時代
 かつて世界は、野生と弱肉強食の掟が支配する世界だった。その世界では人間はか弱い生き物にすぎず、世界を闊歩する怪物たちの餌だった。その状況では文明など望めるはずもなく、人間達ただ日々を生き抜くだけで精一杯だった。
 しかしあるとき、人間達の一部に不可思議な夢が届き始めた。その夢はある島を指し示していた。その島は断崖絶壁に守られ、中央には世界の中心を示す尖塔が聳え立っていた。島には多くの竜たちが住んでおり、竜と対決する危険を冒してまで島へ登ろうとする怪物はいなかった。
 夢は一夜では終わらなかった。竜達は尖塔の周りを円を描くようにとび、1頭、また1頭と天―より高次の世界―へと飛び立っていった。やがて全ての竜が島を去り、島は無人となった。そしてそのとき、夢見る者たちは悟った。―島が住人を求めていることを。
 夢見た者たちに導かれ、世界各地から人間達が島へと集まってきた。彼らは皆別々の言葉を話し別々の文化を持っていたが、互いに争うこともなく落ち着いた。なぜなら、彼らはまさに争いを避けるために島へと集まったからだ。
 島に集まった人々は、さらなる夢に導かれ天の領域/Realms Supernalに至り、天の法則を以って現実を操る力―魔法を手にした。やがて魔法使いたちが指導者となり、島に都市が築かれた。その都市は、「海原の尖塔」を意味することば、「アトランティス」と名づけられた。
 アトランティスにあえて挑む怪物はなく、彼らの文明は栄華を極めた。魔法使いたちは様々な役割を分担して受け持つようになり、戦士、指導者、間諜、学者などへと分化していった。そして何世代もが経つうちに、魔法使いたちは最初の高潔な意志を忘れ、自らの力に溺れるようになっていった。
 やがて、魔法使いたちは二つの陣営に分かれ、大戦争がはじまった。敗者は世界の果てへと追放され、勝者たちは天の梯子を築き、天の領域へと踏み入り、地上を支配しようとした。この暴挙によって天地の境が取り払われ、清きものと穢れたものが混じり、天地は鳴動した。この危機に際して戦争の敗者らは再度団結し、勝者の後を追って天へと攻め入った。恐ろしい戦いが続き、両方の陣営のほとんどが天から地へと投げ落とされた。戦いの果てに天の梯子は破壊されたが、それによって梯子のあった場所に恐ろしい虚無、「奈落」が発生した。こうして天と地とは完全に分断され、その衝撃でアトランティスは水底へと沈んでいった。霊と肉とを隔てる壁もまた強まり、もはや魔法を使わずに精霊界と物質界を行き来することは不可能となった。
 
2.暗黒時代
 目覚めた者達は再び世界各地へと散り、そこで自分達の愚行によって何が失われたのかを思い知ることになった。奈落によって天の領域と彼らの魂とは引き離され、かつては煌々と輝いて魂を照らしていた天の炎は、灰に埋められた熾火のようにかすかだった。魂は眠りに落ちてゆき、ついには炎を維持できずに魔法を失ってしまう者も現れた。残ったメイジ―いまだに目覚めていられた魔法使いたち―も、もはや奈落の注意を惹かずに魔法を使うことはできなかった。ごく少数のメイジたちによって魔法は細々と伝えられていった。
 やがて、天の領域から引き離されたメイジたちの力は衰えていった。たとえ魔法を呼び起こしたとしてもそれは望まぬ結果を伴うようになり、このままではあと数年と持たずに魔法を伝える者たちは絶えてしまうだろうという状況だった。しかしそのとき、一つ、また一つと灯台/Watchtowerが現れた。塔は奈落を越え、残ったメイジたちの魂へと炎を届けた。伝説によれば、天を支配しようとしたExarchに対抗する五人の魔術王が地上の苦境を知り、あらん限りの魔術と美徳を注ぎ込んでこれらの塔を建てたのだという。こうして五つの塔が天に輝き、地上に残されたメイジたちへ幻視を送り始めた。その様子はまるで、アトランティスが彼らの先祖に呼びかけたときのようだった。こうして、限定的ではあるものの天との繋がりを取り戻し、メイジたちは再び魔法を使えるようになった。
 天へと登り世界を支配しようとしたExarchたちはまだ存在しているのだと言われてはいるが、誰もその実在の証拠を掴んだ者はいない。たとえまだ彼らが存在しているとしても、偶然を装って、誰にも分からない形で世界に干渉しているのだろう。眠りの呪いが人間達の目から魔法を覆い隠している今、人間がかつて神になったことを覚えているのは、もはやメイジたちだけだ。
 
3.メイジの誕生とPath
 現在では、メイジは五つのWatchTowerのいずれかと絆を結んで誕生する。五つの塔はそれぞれ別の領域に建っており、どの塔に繋がりがあるかによって、得意とする魔法もその性向も違ってくる。五つの塔のどれと絆を結んでいるかを表すのが道/Pathだ。
 道には以下の五つがある。
 
 アカンサス:妖精の領域アルカディアに建つ月銀の刺の灯台と繋がりを持つ。幸運に守られた道化師、放浪者たち。運命と時間を得意とする。
 
 マスティゴス:悪魔の領域、万魔殿に立つ鉄篭手の灯台と繋がりを持つ。試練を与えるもの、誘惑に耐えて道を貫く者。空間と精神を得意とする。
 
 モロス:死者の領域、スティギアに建つ鉛貨の灯台と繋がりを持つ。生死の境を知る者、錬金術師たち。死と物象を得意とする。
 
 オブリモス:天使の領域、至聖の王国に建つ金鍵の灯台と繋がりを持つ。神の戦士にして不屈なる者たち。力象と原質を得意とする。
 
 スリサス:原始の領域、祖霊の王国に建つ石書の灯台と繋がりを持つ。生命力に溢れる者、情熱のシャーマンたち。生命と精霊を得意とする。
 
彼らはいずれも、覚醒のときに五つの領域のどれかへと魂の旅をする。そして道のりの果てに、自らの名前を灯台に刻み込んで帰ってくる。それによって魂は灯台と繋がり、灯台から天の炎を受け取るのだ。
 
4.カバル、結社、協議会
 メイジは本質的には皆孤独を好む生き物だ。しかしながら、現実には孤独に暮らすわけにはいかない。様々な危険が待ち構えているからだ。例えば、メイジの中には超自然的種族…ヴァンパイアやワーウルフ…の正体を見破ることができる者が多い。そしてまたそれゆえに、正体に気付いたことを気取られることもある。正体を知られたことが分かった場合、相手はかなりの確率でメイジを殺そうとしてくる。彼らの超常的な身体能力と備わった特殊能力のことを考えると、そうしたときに1人では生き残れない。そうした危険に対処するためにメイジ達が集まって作る集団がカバルである。無論、カバルの目的は自衛だけではない。集団で何らかの目的を目指していることもあるし、お互いに見張りあうことで堕落の危険を最小限に止める目的もある。カバルに入っていないメイジはほとんど居ない。というのは、カバルに入っていないということはそのメイジの正気を保証するものが誰もいないからだ。そういうわけで、カバルに入っておらず入ろうともしないメイジは、誰からも信用されないということになる。
 メイジが属する集団はカバルだけではない。カバルよりも大きな集団が、結社だ。結社はメイジに魔法の知識を教え、メイジは結社の目的のために働くことを誓う。五つの結社が存在しており、ほとんどのメイジはいずれかの結社に所属している。結社の概要は以下のとおりだ。
 
 The Adamantine Arrow:アトランティスにおける戦士階級だった結社。あらゆる戦いの技に精通している。戦士としての道徳を保つことを理想としている。
 
 Guardians of the Veilアトランティスにおいて密偵だった結社。影に潜む技と陰から物事を操る技に精通している。魔法の秘密を守ること、影ながらの働きによって社会を健全に保つことを理想としている。
 
 The Mysteriumアトランティスにおいて学者だった結社。知識そのもの、そして知識を集めるための技に精通している。より多くの知識を集め、アトランティスの遺産を守ることを理想としている。
 
 The Silver Ladder:アトランティスにおいて支配階級だった結社。支配の技に精通している。人の上に立ち、正しく統治することを理想としている。
 
 The Free Council:アトランティスに起源をもたない結社。技術と科学に精通している。自由であること、新しいものを認めることを理想としている。
 
 そしてもう一つ、協議会について話しておかなければいけない。協議会は、地域のメイジ全体で作られる組織であり、その地域で起こるメイジ同士の揉め事を調停することを目的としている。協議会の頂点には1人の教主と四人の議員で構成される審議院があり、彼らが協議会で審議される問題に対して裁定を下す。基本的には、協議会は地域のメイジ全体の意志を反映した組織であり、民主的に運営される。しかし、民主的な協議会と同じくらい沢山の独裁主義的な協議会が存在している。そうした、審議院の権力が大きい協議会が発生するのには理由がある。そのほとんどは、玉座の予見者(Exarchの僕であり、世界から魔法を一掃しようとするメイジだ)やバニッシャー(魔法を受け入れず、メイジを狩ろうとするメイジ)といった外敵と戦っており、敵に対して一致団結して立ち向かうために、審議院が指揮を取っている。こうした例外を除けば、(少なくとも建前上は)民主的に運営されるもので、そこで処理される議題も霊地を巡る争いなどが中心だ。