ボストンのCabalについて

訳注:エボン・ヌースやらホワイト・プットナムやらはCabal(メイジの集団)の名称です
エボン・ヌース

 魔術を巡る陰謀も、幸運なことに大抵は関係者の人生とともに幕を下ろす。エボン・ヌースの逸話のはじまりは、遠く植民地時代の初期にまでさかのぼる。16世紀、アカンススとスリサスのメイジはキリスト教の支配するヨーロッパで自らの魔術を隠しとおす必要に迫られていた。多神論的な儀式や異教めいた修練の中で培われてきたアトランティスの知識は、当時の社会では忌むべきものとみなされたからだ。新大陸の噂が真実であるとわかったとき、彼らの一部はこの巨大な、そしておそらくは人もまばらな新たな土地でこそ新たなチャンスが見つかるだろうと考えた。エボン・ヌースは、清教徒と同じ船で―そしておおむね同じ目的を持って―旅立った。清教徒と同じように、冒険心に満ちたメイジたちは荒野に暮らすことを望んでいた。
 しかし、新大陸は無人の土地とは程遠かった。入植者の集団は原住民族を発見したし、メイジたちは原住民のCabalが力ある土地を掌握していることを悟った。原住民のメイジもアトランティスのことを知っていたが、彼らに伝わる話はエボン・ヌースのものと微妙に異なっていた。同じようにアトランティスの興亡を語ってはいたが、旧世界の伝統を支持してはいなかった。決闘の輪も協議会/Consiliumの威光も原住民たちにとっては無意味なものだった。彼らは迅速に新参者を監視し、抑止しはじめた。
 エボン・ヌースは、ニューイングランドの社会の隙間に手を伸ばしはじめた。清教徒たちでさえ、時には水占いの棒が祈りの役に立つことを認め始めた。さらに、このCabalは黙って迫害されることを良しとせず、必要ならば敵の農地や動物に死の種を蒔くこともできるのだと知らしめた。彼らは都市の形成をThe Guardians of the Veilにゆだね、力を増してゆくボストンの協議会とはほとんど交渉しなかった。
 しかし1906年には、エボン・ヌースとホワイト・プットナムは共にセーレムを訪れることになった。双方の対立は、知られていない儀式とそこで交わされた誓約によって終息した。ボストンのメイジが密かな協定を保つことで合意し、それによって地域のThe Guardian of the Veilを上回る力を持った集団が構成されることになった。互いの間で、ホワイト・プットナムは贖罪のための任務に専念し、エボン・ヌースがセーレムからの利益に預かることで合意が成立したそして、この出来事は新たな動きが起こることを示していた。協定の調印者たちはセーレムにおいて、マナと魔術的な武器の備蓄を巡って争いを始めた。まもなく対立はお互いの間の同盟に変わり、緑色の雲がセーレムに雨のように蛇を降らせた。セーレムに住む七人の女性が恐るべき秘密を内に隠した灰色の家を夢に見、血を流して狂気に陥った。同盟者たちは強力な呪文に掛けられたが、魔術による誓約のために彼らが結んだ協定の内容の全てを明かすことは拒んだ。
 エボン・ヌースはセーレムに拠点を作り上げた。彼らは数を保つために密かに参入者を集めることと、街を訪れるメイジを仔細に監視すること以外には殆ど活動しなかった。Cabalは魔術を用いずに、投資と各々に伝わる遺産から集めた金で彼らの土地をしっかりと掌握していた。 彼らがセーレムの外にも領地を隠しているという噂もあった。
1960年に、Cabalは思いがけない余禄を得た。彼らの支配する土地がネオ=ペイガン運動の巡礼地になりつつあったのだ。彼らはエボン・ノースの残した古いペイガン象徴主義を、その超自然的な意味を知らずに用いていた。何千という信奉者からCabalは徒弟を選び、同盟を強化することができた。The Guardian of the Veilの支配が終わりホワイト・プットナムが上流階級の中へと身を潜めた後、エボン・ヌースは彼らの得た新たな力を拡大し、確実に自らのものとしはじめた。彼らは寛大に振舞ったが、触れてはならない部分に触れたメイジは彼らから過酷な教訓を与えられるはめになった―多くの場合、彼らの監視員であるAnacaona de Xaraguaの手によって。
 現在様々なOrderからなる九人のメイジがCabalに所属しているが、中でもNemean Hierarchを含むthe Silver Ladderのメンバーが多数を占める。こうした大規模な集団には多くの人間がメンバーとしての資格を要求してくるという問題がつきもので、現在のメンバーもこれを認識している。過去にもヌースは、当然の敬意を払っていた複数の放浪のCabalに助力を与え、時には自分達のメンバーを送って訓練や協力を行ったことがあった。時折、こうしたCabalがエボン・ヌースの符丁を使いこなし、自分達を実際よりも大きな集団であるかのように見せることもある。


ホワイト・プットナム
 ホワイトプットナムは、ボストンの最も古くから続くCabalのもう片方である。300年ほど前、もともとの目立たない農業を営む共同体だった彼らはマサチューセッツの紳士階級の集団へと変化した。
 1905年、サミュエル・パリスの子孫を名乗る2人の覚醒者の姉妹がボストンに訪れ、ホワイト・プットナムとと加わった(訳注:多分)。このCabalの名はその伝統を表すものであり、同時に過去の罪業と決別しようという意図から付けられていた。より現実的な観点から言えば、彼女たちはその謙虚さからthe Silver Ladderへ忠誠を誓ったが、そのことは権勢を増しつつあったthe Guardians of the Veilに対する脅威とはなり得なかった。彼女たちは献身的に教育、慈善、そして陰謀へと身を捧げた。それは、彼女達の聖地の名から命名されたプットナムを維持するためであった。
 1906年、Cabalは過去のボストンにおける先達の責務を受け継ぎ、過去の遺産を再び手にするためにセーレムの支配権を主張した。そして、エボン・ヌースと彼らとが対立することになった。両者の対立は秘密裏に結ばれた協定によって終息し、ホワイト・プットナムはボストンへと引き上げることになった。長年彼らを悩ませてきた呪いは、協定の調印によってなりを潜めたようだった。
 現代のホワイト・プットナムは厳格な清教徒というわけではない。長であるチェイン・パリスの指揮の下で、今までのやり方を改めて寛大さを身に付けつつある。だが、七人のメイジ全員が長を支持しているわけではない。パリスの支持者は四人で、残り三人はCabalの方針は異教徒や冒涜者と協力することに飽き飽きし、寛大にすぎると考えている。この三人は、Cabalの伝統であるthe Silver Ladderの代わりにThe Mysteriumに自分達の未来を預けている。
 ホワイト・プットナムは、裕福なメイフラワーの植民者たちが開く会合やパーティに繋がりを持っている。エリート階級が幸運の導きを必要としたり知られては困る秘密を明らかにされたときには、ホワイト・プットナムの持つ真鍮の指輪をちらりと見せるだけで恩恵にあずかろうと誰かがこそこそと近づいてくるだろう。そもそもは、Cabalは勢いのある中流階級の眠れるものを支援してきた。しかし、メイジの間でのこうした普通の人々の重要性は次第に衰え、メイジたちは眠れるものの上流階級の持つ富と習慣の中での楽に満足するようになっていった。とはいえ、彼らは自分達の倫理基準に反する仕事を行うことはせず、承諾したことは誠意を持って成し遂げる。
 ホワイト・プットナムは、様々な仕事のために訪れたメイジや困窮しているメイジを雇うことで知られている。たとえば、監視やアーティファクトの密輸の追跡、そして他のよそ者のメイジの様子を「観察」することなどである。