バニッシャー

 バニッシャーは、自分が覚醒したことを祝福だとは思っていない。彼らは覚醒することで新たな発見や解放を得たのではなく、覚醒によって呪われたものたち、あまりに突然に、世界が自分が今まで考えていたよりも危険で暗いものだということを見てしまったメイジだ。魔法によって超自然の世界を理解できるということが彼らを苦しめる。そして彼は、超自然の存在を狩る残忍な狩人―巨大な邪悪を清算するために自らの呪いを使う恐ろしいメイジ―になる。しかし、彼らはいずれ、もっと危険な存在、つまり他のメイジたちが存在することに気付く。バニッシャーが魔法に好意的であることはありえない。彼らは魔法を全て滅ぼそうとする。そのときこそ、彼らの悪夢と幻視が終わりを告げるときなのだ。
 殆どのバニッシャーは、自分が魔術を学ぶほかのものたちを滅ぼすために魔法に覚醒したのだと信じている。おそらく彼らにとって良いのは、獲物を滅ぼしたことで苦痛が止み、元の生活に戻ることだ。そうでなければ、彼らは殺し、そしてより強大になる道を選ぶしかない…いずれ、怪物的で非道徳的なメイジを作り出すのと同じ誘惑に直面するまで。そうではなく、バニッシャー自身が堕落したことで他の誰かが彼を滅ぼし、彼に取って代わることを望むものもいる―ある時点で、狩人は狩られるものになり、そしてその連鎖が続いてゆくのだ。魔法を極めたいという誘惑は彼らにも存在しているが、バニッシャーはそれが、最終的に破滅へと続く道ではないかと疑っている。
 あるバニッシャーの有名な呪文に、魔術師の精神から魔法の知識を盗み取ったり、あるいは単純に知識を消してしまったりするものがある。当然、バニッシャーは魔術の秘儀を保存しておくことには興味が無い。彼らが邪悪と考えているものを滅ぼすためならば、喜んで公然と力を使うだろう。暴力や危険といった代償があるとしても、邪悪を消すためならばそれを厭うことはない。大きな理由があると考えている場合、矛盾や眠れるものの犠牲さえ許容することもある。バニッシャーにとって、秘密にしてく必要があるのは自身の魔法だけだ。実際、特に熱心なバニッシャーは自身が魔法に頼っていることを認めたり明らかにすることを(自分自身にさえも!)嫌がっている。多くは、全ての魔法の知識を消し去り、事を成し遂げたならば自分自身もそれを忘れ去ることを公言している。だが、魔法使いを追い狩りたてることが、彼ら自身を巨大な邪悪へと変えることも多い。 彼らはより強くなり、より強大な邪悪を滅ぼそうという誘惑にさらされている。その道を一歩進むごとに、ハンターは引き返すことがどんどん難しくなっていることを知るのだ。
 もっとも予測できないハンターは孤独な壊れた魂を持ち、覚醒というものを誤って理解している。どうにか自分に起こったことを理解しようと無駄な努力をする中で、孤独なバニッシャーは自分が呪われてしまったことに対してある理由をつける。あるものは宗教に頼り、神や悪魔によるものなのだと信じる。またあるものは、自分自身を全人類の守護者に任命する。こうした救いを求めることが、孤独なハンターを苦しめる。ゆっくりと人との繋がりを断ち切り、彼を救おうとする人たちを疲れ果てさせながら、孤独な狩人は魔術を学ぶものたちについてある超常的な認識を得る。間違えてはいけない。確かに、真に狂った、非道徳的で怪物的なメイジに遭遇するものもいるかもしれない。だが多くは、智慧を持つ組織だったCabalに鋭く毒を帯びた熱情を持って襲い掛かっているだけなのだ。バニッシャーの知覚は歪められ、自分自身の妄想に固執する壊れた精神を通して世界を見ている。通説では、彼らの魂はより強大な怪物を倒したときだけ休まるのだと言われている。死―それこそが、狩るものと狩られるものを待ち受ける避けがたい運命なのだ。